弟と父の喧嘩で起こされました。

 

残念ながら僕ら兄弟というのは、この家に恨を抱えているのです。

僕が腑抜けになったのも、また弟の気性が激しいのも、全くこの家のせいであると思うのです。

 

特に僕の小さかった頃はまだ弟も妹もいませんでしたから、特段、今日の喧嘩とは桁違いの暴力などを喰らうのでした。

 

僕が愛と言うものを知らずにいたのもそのためであったように思います。
父はおよそ、父らしいことをしない人間でしたが、そのくせに厳格であろうとする人間でもありました。

そんな折に弟たちが生まれましたから、僕は母の愛情も、父の愛情も不十分に育ってきたのでした。

 

そのせいでもありましょう。思えば、人ばかり気にして生きてきました。
父のせいであると言うのは、父と話すたび動悸がするからです。
人の顔ばかり伺うので、言い訳と演技が得意になりましたが、道化であるばかりでしたから、また悪いのです。

 

そのうちに、外見と、絵を笑われるのにも慣れました。傷つかないと言うのではありませんが。 ここが実にいやなのです……傷つきながらも慣れると言うのは、つまり諦めじゃありませんか。 実際、僕は幼いながらに諦めを覚えました。そのために枕は毎晩濡れて。

 

で、あるので、やはり僕は、この家のために腑抜けであるのです。
この家から出るのが、僕を腑抜けから救う手立てであると考えるのです。
帰る家はあるが、帰りたい家は無いのですから、それが欲しいと願うばかりです。