日記-24
日々が美しく感ぜられる。
心を開いたからなのだろうか。歩むのは遊んだのちの帰路である。
鬱々とした夜の、真っ黒い空では無い。
淀んだ黒雲が、宵のうちとうそぶかれる時分の冬の空にかかり、小豆色に妖しく佇む。
そのはるか下であるはずなのに、一色を敷き詰められた雨空と、街灯のぼんやりとしたオレンジの丸い灯が、溶け込みあって、ただ一枚の絵であるかのようにそこにあった。
ただの日常の風景のようで、しかし雨に打たれて波打つ、コンクリ上の水溜りが、地面に落ちる灯りをゆらゆらと映しあげるその流れに、ふと、心を惹かれるような深夜であった。
その風景の中を、丁度横断歩道の真ん中で、誰もいないのをいいことに佇んでいると、占領している気になって、少しの優越感さえある。
どうせ、車は来ないのだ。思い切り楽しんでやろう。……
この美しさを絵に書けと言われても、また写真に写せと言われても、不可能だろう。
なぜなら、私のこの美しいと思う心は、今この瞬間のみのものであるからだ。
この瞬間を切り取って、日常以上に表せるものがあるか?
多くの人にとって、おそらくNOを突きつける問いだろう……己の中の美しさを追いかけることをしたとしても、共感を得れるわけではあるまい。
この感覚を閉じ込めるには、文が丁度良い……
己の手足のように使える文ならもっと良い。
そのために今日は日記を残すのである。正しさなどはなにもない。ただの旅行記のようなものである。