日記-25
友と遊んだ後は、いつも寂しい気持ちになる。
あいつに言えない言葉があった。あいつにできない行いがあった。……
反省会のためのような時間であり、しかし散歩をしている心地で、美しいものを見つけるためのような時間であり。
後悔と切なさと耽美の心地の中、一人歩き帰る際に見る夜空は、世界の終わりと形容してしまうには、あまりにも爽やかな紺色であった。
その夜の闇は紺碧のセルロイドであるらしい。
スナックや、バーや、弁当屋が立ち並ぶ通りの建物に、美しい色が落ちている。
白熱灯が、より強い街灯のオレンジに照らされて、橙色のハイライトを際立たせるように、水色の影となる。
美しいコントラストに耽溺しつつ、歩を進める。
白色が目に痛い橙に喰われ、影を落とす燈となっているのは、痛々しいようでもあり、美しいようでもある。
映画の演出のような効果を生み、陶酔にふける。全くもって馬鹿馬鹿しい夜の散歩道である。
さて、そんな店だらけの通りを抜けると、住宅街に当たる。
イルミネーションが彩る、マンションの一室のベランダは、一見華やかな馬鹿騒ぎのようで、その実うら寂しい。
あの光る似非雪景色を誰が見る?あくせく働く車たちの、激しいブレーキランプにかき消されて、誇示される輝きもない。
内側の家族の盛り上がりを想像しながら、しかし当然のように、彼らは外側には目もくれない。
今は28日。すでに時期を外れたサンタは、夜の闇を未だ虚しく照らしている。
あいつは、ちゃんと家に帰れただろうか。
心配症が災いしてか、あるいは日常に潜む虚無感に充てられてか。くだらない考えが頭をよぎるのを、止める術もなく足は進む。
一時間も歩くと、体内は暑いが、冬の寒さのせいで体表は冷たい。そのギャップにやられて、鼓動も早くなり、疲れが増す。
なにも考えられず、何も目につかず。家にたどり着き、ほうと息を吐く。
スマホを見れば、通知がいくつか入っている。今日のところは満足いただけたようで、企画したものとしては、冥利に尽きる。
あいつは、今日のプレゼントを気に入っただろうか。ひとまずは、友のことばかり気にかかる。面倒臭いが、悪いことはない性分である。金の貯まらないのだけが難点ではあるが。
とりあえずは、今日集まってくれたことのお礼と、いつものお礼と、好きなものには貢ぎたくなる性分と、……そんなものの発露であるから、後悔は全くない。あくまで独善的な享楽のためである。
そんなことを考えながら飯の準備をする。遊んでいた頃の楽しさを思い出しては、身を灼く様な寂しさにじっとたえながら。